こんにちは、昇高弘典です。今回は工務店におけるVR技術の可能性について解説します。
- 「VR展示場って実際に必要なの?」
- 「何か他者と差別化できる営業手法ないかな?」
- 「設計提案力をもっと上げたい」
そんな悩みを持っている方向けに、現場で実際にVRを使ったマーケティングや営業活動を実践した経験談を踏まえて、解説します。
ぜひ最後までご覧ください。
工務店におけるVR技術を実践して分かったこと
まずは私が工務店において、どのようにVR技術を現場で活用したのかについて紹介します。
実践したことと学び
そもそも、私がなぜVRや3DCG技術に興味があるのかというと、大学院時代にVRを使った建築計画の研究をしており、当時からこれらの技術に将来性を感じていたからです。
たとえば、インターネットや計算機の技術は本来戦争のために開発され、その後大学で使われるようなって、世間一般に普及してきました。
このような歴史を考えると、VR技術やメタバースといった技術も今後世間一般に普及する可能性はあると考えています。ただし、学や大学院で研究されている技術が世間一般に普及するには、とても時間がかかります。
なので、実際に工務店という現場で働き始めて、次のようなことを実験しながら、その可能性について現在も検証を進めています。
- 実際に建設したお家を360度カメラで撮影して、3Dデータ化した
- Oculus Quest2とMatter Portを使って住宅購入検討者にVRルームツアーを体験をしてもらった
- 3DCADソフトで建設予定の住宅をモデル化した
- 3Dモデルを使ってCGパースの作成や住宅提案の資料を作成した
工務店とVRの今後について
上記のような実践を通じて感じたことと将来的な可能性について、私なりの意見をまとめたいと思います。
まず、現時点で工務店というスモールビジネスにおいて、VRや3DCG技術といった比較的データ量や作業者の処理能力が求められる技術は今後数年間で急速に普及する可能性はかなり低いと感じています。
その理由は、以下の2つのことが考えれます。
- VR技術を使いこなせる人材が不足している
- 顧客提供価値よりも導入コストが高い
まず1つ目の「VR技術を使いこなせる人材の不足」について、VR技術を扱うには3DやWEBに関する基本的な知識や経験が求められます。
多くの工務店では、これまで2Dを主体とした営業を展開しており、近年3DCGパースがやっと普及し始めているような状況です。このため、まだまだ3D技術を扱える人材が育っておらず、現場で積極的に活用していく動きになりにくいと考えます。
2つ目の「顧客提供価値よりも導入コストが高い」について、そもそも世間的にVRや3DCG技術が普及していないため、住宅購入層の顧客が自らそのような体験や経験に対して価値を感じるというケースが、現時点ではほとんどありません。
また、本格的なVR体験をしてもらうためにはヘッドマウントを付けてもらう必要があり、マウントを付けると車酔いのような気持ち悪さを感じるなどの不快な体験をさせてしまう場合があります。
このように、導入コストやリスクが顧客への提供価値よりも大きいため、提供しても意味がないという経営の判断がなされて、導入が進まないケースが多いと考えられます。
以上のような理由から、今後数年間で工務店というビジネスにおいてVR技術が積極的かつ一般的に利用されるようになるとは考えにくい状況にあります。
一方で現場に立ってみると、ゼネコンやディベロッパーなどが扱う比較的大型の建築プロジェクトの現場ではこれらのの技術利用が積極的に行われるようになる可能性があると感じます。建築が大きくなるほど、情報伝達の正確性や失敗リスクの回避性が求められるので、VRや3DCGを積極的に活用していくことができると思います。
また、賃貸不動産や建売住宅など既存の建築空間を遠隔地域の人に向けて共有したい場合には、有効的な手段になるのではないかと考えています。
工務店にVRを導入するための手順
では、工務店においてVRを将来的に導入するために、どのような手順で進めていくのが良いでしょうか?現場の経験を踏まえると、3つのステップで準備していくのが良いと考えます。
手順① VRやメタバースを使える環境づくり
まずは、VRやメタバースといった最新の技術について組織内で情報共有や学習できる環境を用意していく必要があります。多くの場合、新しい技術を組織に浸透させるためには、反対意見や拒否反応などのハードルがあるでしょう。
なので、自ら進んで勉強したい、やってみたいという人を有志で募り、少しずつ組織内に浸透できるような環境づくりから始めた方が良いでしょう。
手順② CADの3D化
工務店の場合、過去の建設した物件や未建築プロジェクトなどがあるでしょう。そういった事例について、2Dcadデータをもとに3Dモデルを作成したり、既存建物の3Dスキャンに取り組んでみましょう。
3Dモデルを作る場合は、なるべく軽いデータで仕上げることを意識して、その後にどのような技術でVR空間に落とし込むのかまで検討しておきましょう。
たとえば、SkechUpやRevitを使って3Dモデルを作成して、TwinmotionのVR機能でヘッドマウントディスプレイ上に表示するなどの一連の枠組みを考える必要があります。
3Dスキャンしたデータを取り扱う場合には、どのようなカメラでスキャンしてどのようにスキャンデータを表示させるのかについて考える必要があるでしょう。
実際に私が行ったのは、Insta360 ONE X2とMatterportを使って3Dスキャンを行い、Matterport上で構築したスキャンデータをOculusのWEBブラウザで表示するという流れでした。
このように、3Dデータやスキャンデータをどのように作成して、どのように表示させるのかについて機材や使用ソフト、サービスを検討してみましょう。
手順③ VR技術の普及待ち
最後は少し残念かもしれませんが、VR技術が一般的に普及するまでじっくり待つ時間になるでしょう。ブログの序盤で述べたように、まだまだ技術の浸透には時間がかかります。
競合や他社が手を付けていない領域だからこそ、勝ち目があると思いますが、その分じっくりと長期的な目線でこれらの技術に向き合っていく必要があると私は思います。
まとめ
今回は、工務店にVR技術は必要か?どうすれば導入できるのかということについて、現場での実体験をもとに解説しました。
建築という領域においてはかなり有益な技術ではあるものの、まだまだ時代が追い付かないのが現状だと思います。
どのようにこれらの技術を活用すれば将来的に勝てる戦略を取れるのかについて、今後も当ブログで発信していきたいと思います。では、次回のブログでお会いしましょう。